ひみつ基地

2015年6月号 vol.28

数年後に大学入試センター試験が廃止されてなくなる!-新しい大学入試は何をどのように測るのか?

2017年09月22日 15:30 by shoko_kawahara

大学入試が変わる―。そのようなニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。20年以上実施されてきた大学センター試験が廃止されるということで、世間からも広く注目を集めています。今の中学1年生が高校3年生になる2020年度実施分から新しくなると言われています。すでに「高大接続改革実行プラン(※1)」が作られ、工程表まで示されるなどその情報公開や対応の早さは異例で、「明治以来の大改革」と下村文科大臣も意気込んでいます。そもそも、なぜ大学入試は変わらなければならないのでしょうか。

受験予備校化する高校の嘆き

現在の大学入試を突破するために必要な力は、言ってしまえば教科書の内容を記憶し、解法を身に付け、入試という1回限りの場で再現する、という力です。し かし、高校教育(さらにはそれ以前の初等・中等教育)で育むべき力はそれだけではありません。学習指導要領の中では、「知識・技能」とともに、「思考力・ 判断力・表現力」や「主体性・多様性・協働性」も育むべしと謳われています。

一方で、高校も少子化の影響を受け、平成19年は5313校あったのが、平成25年には4981校まで減る(※3)など、公立・私立に関わらず生き 残りに必死です。大学への進学実績を上げて受験生を獲得するため、受験に直結する「知識・技能」に重きを置き、「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多 様性・協働性」を軽視する、という傾向さえ見られます。

特に進学を主軸とする普通科高校はその傾向が顕著で、例えば職場体験(インターンシップ)の実施率は63.7%しかありません(職業に関係する学科 では83.8%)。さらに、1名でも体験していれば前述の「実施している高校」の数には入れられるため、卒業までに1回でも体験したことのある生徒数でみ るとわずか13.9%(職業に関係する学科では59.2%)という結果(※3)です。もちろん、こうした取り組みだけが「思考力・判断力・表現力」や、 「主体性・多様性・協働性」を高めるわけではありませんが、実際にキャリア教育やプロジェクト学習に熱心な先生方は、大学進学につながるのか、という点で 学内での理解が得られにくい、とおっしゃいます。



新しい大学入試が目指すもの


どのようにして「知識偏重」から脱するのか?具体的なことはこれから議論するとされていますが、一貫して「多様な能力を、多様な方法で測る」ことを目指し ている、ということがポイントです。もちろん「知識・技能」も測りますが、それ以外の能力も測っていく、ということです。

例えば難関大学や医学部などでは、教科書の範囲だけでは受験生の得点に差がつかないため、難問奇問と呼ばれるような出題をし、差がつくようにして合 否を決めるケースがあります。そうすると、受験勉強にさらに膨大な時間が取られますし、しかもそこで求められる知識というのは、選抜で差をつけるための知 識であり、実際に入学してからは使わない、ということも(全てではありませんが)起こるのです。その大学で学ぶにあたって必要な基礎学力があるかどうかを 担保しながら、さらに別の要素としてその大学で学ぶために必要な「思考力・判断力・表現力」や、「主体性・多様性・協働性」を大学ごとに定義し、その大学 なりの方法で測る、ということが求められています。

学校教育が変わるチャンス

「思考力・判断力・表現力」や、「主体性・多様性・協働性」をどうやって測るのか?それを設計・実施できる人間はいるのか?

これまであまり取り組んできていないことに取り組むわけですから、知識・経験・予算・体制など様々なハードルをクリアしていかなければなりません。しか し、一人一人にあった教育をし、それぞれに会った受け皿がその先に用意され、それぞれに会った形で社会に適応できるよう育んでいく、という理想について は、私は共感します。「知識・技能」だけを問われる受験のため、無理して画一的な教育を行い、一人一人の才能やペースに目を向けられない、という事態は避 けなければなりません。教育に携わるあらゆる人がこの現状に目を向け、問題解決のために知恵や力を出し合う、そのような改革になるよう、私も微力ながら力 を尽くしたいと思います。

※1:高大接続改革実行プラン
※2:総務省統計局・日本の統計
※3:国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター/平成24年度職場体験・インターンシップ実施状況等調査結果

NPO法人NEWVERY 高大接続事業部ディレクター 川原祥子

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