ひみつ基地

2015年8月号 vol.30

すでに「チーム学校」を実現しているカナダの教育-教員が多様な経験を積み、各専門家が連携して支える

2017年10月20日 15:15 by miwa_csuka

近年、文部科学省の中央教育審議会の部会では、「チーム学校」が検討されるようになりました。(文部科学省:チーム学校関連資料)「チーム学校」とは、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーのような専門スタッフの増員や地域人材の活用を進め、国際的にも多忙な教員の負担を軽減し、学校の教育環境を整えようとしている取組みです。学校の職員全体に占める教員の割合は、アメリカで56%、イギリスで51%ですが、日本は82%となっており、非常にその割合が高くなっていることがわかります。他国では、教員以外に多くの専門スタッフが学校に入っていることがわかります。

今回は、第一回目に続き、カナダで留学支援と教育システムの研究・広報活動を行っている美和チュッカさん(Westcoast International Education Consulting)から「チーム学校」をすでに実現させ、教員養成にも力を入れているカナダの状況についてご紹介を頂きました。


(photo:Prepare for Canada

前回の記事で、カナダの教員育成から雇用についてお話させて頂きました。(ハードルも高いが質も高い!カナダの教員養成の仕組みとは?-幅広い知識と社会経験を重要視する採用育成)皆様どのように感じられましたでしょうか?

もちろんカナダと日本では、ニーズや社会システムも異なります。一概にどの方法がいいかお話することは難しいと思いますが、今回の記事を執筆させて頂くにあたり願っていることは、日本とカナダの教育者の皆様が情報交換をするきっかけになれたらということです。教育においてはどの国でも社会を理解し、どんな人材を育成する必要があるのか、どんな技術やスキルを持ったら雇用につながるかなど将来を見据えて取り組む事は大切です。教育者の皆様が海外の教育システムや諸先生方と交流される事は、国際的視野を持つ青少年育成に必ずつながると考えます。今回は実際に先生になってからのスキルアップについてお話します。

個人の能力や資質、興味にあわせて仕事に就くことが大切

今後、日本社会がより国際化し、グローバルな職場で日本人が活躍しないといけなくなった場合、カナダの教育システムは大変参考になります。カナダは 世界でも有数の資源国家であり、とても国際ビジネスが盛んです。カナダ社会では、個人の能力や資質、興味にあわせて仕事に就くことが大切と考えます。溶接 工や工事作業員といった労働をしている人達の年収も有名大学を卒業した人達と変わりません。

転職や避難民が移民してきてすぐに頼る場所は、地域の教育機関です。アドバイザーがいて、進路相談にものってくれます。学費も生活費も含めて教育 ローンを組むことが出来ますので、家庭を持っているお父さんでも大学に戻り、仕事に就くための訓練を受けることが出来ます。カナダの教育は、そういった地 域社会のニーズにあわせた取り組みが行われています。ある地域の校長先生は、地域に避難民が多いことを踏まえ、校舎を開放して、産業機械の指導をおこなっ ている事例もあります。そういった社会背景においてカナダの教育者は、常に個人の社会的自立ということを念頭に指導していらっしゃる方が多いです。


(先生の理科研修の様子:TELUS World of Science

先生の副業もOK!?新任教員の育て方とは?

カナダでは、すぐに正規雇用で先生になれる人は少なく、非常勤勤務を経験してから常勤の先生になるケースが多いです。非常勤の先生というのも各教育 委員会に登録し、お休みになる先生の代わりに授業を教えるので、本当に色々な教科を教えます。多くの教員と関わりながら色々な教授法を身につけていきま す。

さらにブリティッシュ・コロンビア州(BC州)で常勤になった場合、一年に5日間教員の研修の日があります。基本的にその日は授業がなく生徒はお休みで す。各教師の興味や研究にあわせて勉強内容を選択していいことになっていますが、その5日間の中には教育委員会が企画する研修が1日、BC州政府が企画す る大きな研修が1日あります。各教科にあわせて、理科、英語、化学、物理などの教授法から、学級経営や特別支援についてなど様々なワークショップが開催さ れ、先生個人のスキルを伸ばします。

またカナダでは先生の副業が認められていますので、常に社会と接点がある先生方も多く、教育者という立場だけでなく、ビジネスや他の分野での人生経験を活かして活躍されている方も多いです。


(サレー市の野外教育教員研修:City of Surrey)

多様な専門家のチームが先生や学生を支える

カナダでは、問題行動のある学生や特別支援を受ける必要がある学生は、クラス名簿に星マークがつき、先生方は各学生の個人指導書をもとに、どのよう なサポートが必要か理解します。各学校にスクールカウンセラーが2、3人常駐していて、教頭先生や担任の先生と連携してサポートしていきます。

教育委員会には、自閉症の専門家や、理学療法士、作業療法士、言語療法士が常勤し、必要に応じて先生や、父兄、学生本人への指導を含め個人計画書を作成し ます。精神的に疾患があるケースは児童精神科医もよばれ、一人の学生さんへどのような支援が必要かみんなでチームを組みながらサポートし、全て記録に残し ます。その記録が幼稚園、小学校、中学、高校、大学と持ち上がり、一人一人のガイドブックのような機能を持ち、個人の才能を精一杯伸ばすための取り組みが 行われます。

専門家が連携を組んでチームでサポートするため、担任の先生が一人で対応する必要はありません。最先端の知識に基づいた専門家からの支援をうけながら自信 をもって学生と向き合えると思います。また、Education Assistant(EA)とよばれる補助員が支援が必要な学生につけられることも多いです。チームでの取り組みがキーワードです。

カナダの教育者は、教員免許をとるのも雇用されるのも大変ですが、実際に学生や他の諸先生から学ぶ機会も多く、学校心理士や理学療法士といった専門家との 連携、さらに副業を通じて実社会からの経験も積むことで、教育者としても、人としても成長される方が多いと感じます。大変魅力的な、リーダーシップ力のあ る先生が多いと思います。いつか日本の教育者の皆様とカナダの教育者の懇親会を企画することが出来たら嬉しく思います。きっと日本とカナダの熱心な先生方 と教育について語ることで新しい発見があるかもしれません。

次の記事へ続く/前の記事に戻る)

ウエストコースト・インターナショナル・エデュケーション・コンサルティング 代表 美和チュッカ

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