ひみつ基地

2015年09月号 vol.31

カナダの教員は、残業なし!副業OK!長期休みあり!-教師が地域社会でも活躍し、リアルな教育を提供する!

2019年09月13日 13:48 by miwa_csuka

第一回目第二回目に続き、カナダで留学支援と教育システムの研究・広報活動を行っている美和チュッカさん(Westcoast International Education Consulting)からカナダの教員生活についてご紹介を頂きました。

カナダの教員制度について、第一回目第二回目と記事を書かせて頂きました。日本の制度と比べてカナダでは教員になるまでは時間がかかります。しかしながら、教員になってからの待遇や仕事環境は、日本よりもカナダの方が良いと思います。ただしそういった教育システムや、雇用制度の実現には多くの先生、地域の指導者、親・保護者も含めたくさんの方が並々ならぬ努力をしてきた背景があります。今回は、そういった歴史的な背景も踏まえながら実際に先生になってからの生活をご紹介します。


(photo:Prepare for Canada

時間的なゆとりと副業で先生の器を広げる!

カナダの学校は多くの場合、朝8時からはじまり、担当するクラスにもよりますが終了するのは、3時~4時です。多くの先生は担当しているクラスの指導が終了したらすぐに帰宅します。教師が遅くまで学校に残ることはありません。進路相談はスクールカウンセラーが主にやりますし、問題を抱えている児童・生徒の対応もスクールカウンセラーやユースワーカーが行いますので、教員は自分が担当した教科を教えることに集中できます。日本に比べて、報告書などをつくる必要がないので、事務手続きに時間がかかることは少ないです。スポーツチームのコーチも義務ではありませんので、コーチをやっていない先生もたくさんいます。

日本の先生と最も違うところはカナダの先生は、副業が出来るところです。先生の中には、会社経営をしている人もいますし、カメラ屋さんで週末店員をやっている人もいます。私の主人の恩師は、生物の先生でしたが、夏の間川下りツアーをして、子どもや観光客にカナダの自然を紹介していました。川岸に浮かぶ実験室では、採取した生物をその場で顕微鏡を通して観察することが出来ます。こういった活動を先生自らが行うことは、先生自身もより地域社会を理解することにつながり先生の教師としての器を広げる事に役立つそうです。

カナダの先生の夏休みは、7月と8月、クリスマス前後、春休みもお休みします。休みの間に出勤する必要もありません。そういった時間のゆとりも先生が実社会で副業を通じて、地域社会とつながる活動が出来る理由だと思います。教育とは、社会に出る次世代を育てるためにあるので、先生が社会経験を豊富に持つことはとても重要です。先生自身の社会とのつながりを強くすることは、より現実的な教育を生徒に提供することにつながります。


Make a Future:教育関係のキャリアフェアー)

人事評価よりも研修育成に力を入れる!

先生の評価は、教員に採用されて最初の1年目は校長先生や副校長先生が実際の授業を年に3回ほど見学に来て、教育の質のチェックが行われます。それ以降は基本的に何か定期的に評価されることはありません。教科毎にリーダーがいて、先生同士で情報共有し、学校や教育委員会で先生の研修が色々と実施され、育成に力をいれています。州のテストでは、学生の成績がどのぐらいであったか調査されます。

いじめ問題などで先生の評価が減点されることはありません。カナダの先生達はいじめ問題がおこったら、チームで対応します。通常、担任、副校長、スクールカウンセラーがいじめる方といじめられる方の両方に介入します。

不登校の増加から学校のシステムを見直す!

カナダの教育は、1960年代から産業の発達に伴い大きく変化しました。カナダでは、"Canadian Charger of Rights and Freedom”と呼ばれるもっとも大事な人権を守る法律が1982年につくられました。年齢、性別、身体、人種等で差別してはいけないという今のカナダの思想の基盤です。

もともとは地域密着型の農業や技術といった仕事に直結するような教育が主だったのでした。その後、産業の発展とともに、学問を軸とする暗記中心の教育制度を導入しましたが、学校に通学する学生が激減しました。そのため、1人の学生が必ず1教科は楽しみに学校に通学できるようなシステムを導入しようということになり、必須教科と選択教科がたくさんある今のシステムになりました。

英語、数学、理科、社会、体育といった必須教科と電子工学、ビジネス、会計、木工、調理師、美容師、自動車整備、ダンス、演劇といった実践ベースの教育の融合型です。日本でいうところの専門学校、大学、高校が融合されているような形がカナダの高等教育です。


CBCNEWS:政府の方針に対して、ストライキで抗議する先生たち)

教育を国民全員のために!親・保護者と先生が力を合わせる!

90%の学生が地域の公立の学校に通学するカナダでは、多くの政治家や投資家が学校の民営化を推奨し、私立学校の建設を試みています。しかしながら、教育と医療を国民みんなに平等にというカナダの方針を大事にし、先生、親・保護者が一丸となって民営化を阻止してきました。時には、先生が全員自分達の給料が出ない覚悟で、数ヶ月間もかけてストライキをしたり、裁判をすることで今の教育を守ってきました。今の教育改革は先生方の草の根的な活動と、教育を国民全員のためにと考えた1980年代の政治家の努力の賜物であると考えます。

社会をつくるのは人で、その人を育成するのが教育です。つまり現在の教育制度が未来の社会をつくるといっても過言ではありません。今の教育システムが10年後、20年後の社会にマッチするように今一度、先生、親・保護者、地域、国家が協力し、教育制度の発達、教師育成につながることを願っています。

美和チュッカWestcoast International Education Consulting 代表)

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