ひみつ基地

2015年09月号 vol.31

当事者と支援者の想いを紡いでわかった3つのこと-子どもの貧困対策センター「あすのば」合宿ミーティング

2019年09月13日 13:45 by editorial_desk

「子どもの貧困対策法」が成立し、以前よりも新聞やテレビでも国内の厳しい現状についてたびたび報じられるようになりました。法案の成立を受けて、各自治体では、具体的な施策を検討するため、まず第一に実態調査にのりだしています。官民問わず様々な支援策が計画・実施される中、当事者である子どもたちを中心に、団体運営や政策提言などの対策推進を行う財団法人が新たに設立されました。今回は、その法人が主催し、「子どもの貧困」に関する当事者と支援者が一同に介した夏の合宿ミーティングについて、理事の久波孝典さん(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン東京事務局/東洋大学3年生)からレポート頂きました。

子どもがセンター(ど真ん中)の対策推進を掲げてスタート!

私たち「一般財団法人あすのば」は「子どもの貧困対策法」成立から満2年を迎えた2015年6月19日に設立・誕生した新財団です。私たちは"子どもがセンター(ど真ん中)"ポジションとしての対策推進を特徴に掲げています。6人の理事のうち3人が子どもを代表した学生で、団体運営や政策提言などの活動は子どもの声や想いを大切にしています。

また、団体名の「あすのば」は、「明日の場」であるとともに「US(私たち)」と「NOVA(新しい・新星)」という意味もあります。子どもたちが「ひとりぼっちじゃない」と感じてほしいという「私たち」と一緒だよという願い。そして、多くの人に子どもの貧困問題が他人事ではなく自分事に感じてほしいという「私たち」でもあります。

当事者と支援者が集まる合宿を開催

今回の合宿は、今後の対策やあすのばの活動などについて考えるそのきっかけ作りを目的として実施されました。合宿には全国各地のひとり親家庭や児童養護施設などで育った経験がある、または学習支援や子ども食堂など子どもに寄り添う活動をした経験のある高校生・大学生世代の子どもや若者ら総勢80人が集まって交流を深めながら、それぞれの想いを分かち合いました。

合宿のメインプログラムである「シェアのば ~考えよう、一緒に~」は、自らが合宿に来た理由に加えて、当事者側であれば自らの経験やその時に感じた”想い"を、支援者側であれば支援に携わることとなった”想い”を、自分の話せる範囲で共有することで、各々が今後の生活のさらなる一歩を踏み出す、そのエンジンとなることを願って学生を中心に考案されました。

「話したところで何も変わらないし、何も変えられない」

実際に合宿を行い、前述のプログラムを実行していく中で、筆者を含めた参加者が得た気づきは大きく3つありました。

まず、多くの人が共通して話していたことに「自分がしんどかった時に、誰かに助けを求めよう、あるいは話してみようとすることは”できなかった”、 そうしたきっかけが社会に”なかった”」という内容がありました。これは、よく言われる『つながりの貧困』という問題でもあり、周辺で起きている様々な困 難をさらに悪化させることにつながります。

苦しい環境に置かれている時ほど自分からは声をあげづらく、周りにも声をかけられることがないためにより苦しくなっていく…。そんな現状に対して 「なぜ、声をあげなかったのか」と聞くと、「話したところで何も変わらないし、何も変えられない」と思っている人が多くいました。自らの抱える問題の原因 が自身や自身の家庭の問題にあるととどめてしまっているという点や、あるいはそうした状況に直面した子どもたちが「どうにもならない」と諦めてしまってい る点など、そうした悪循環の一端を垣間見ることができました。

そうした声をあげてもらったことによって、参加者の多くが、この構造自体が問題なのだという気づきを共有することができました。

常に寄り添い続ける姿勢こそが、目の前の子どもを救う

そして、それらの当事者に近い方の声を理解することができたからこそ、「当事者側の子どもたちが声をあげづらい状況にこそ傍にいてあげたい、子ども の辛さを感じ取ってあげられる、本当に困っている時に手を差し伸べられる人になりたい」という気持ちに強くさせられました。困難な子どもたちへの最もよい 手助けのタイミングは見極めが難しく、全てを手伝おうとしてしまうと「自身で困難に立ち向かった」という実感が持てなくなってしまい、自己肯定には結び付 きにくい結果となってしまいます。子どもたちの主体性を尊重しながら、常に寄り添い続けるその姿勢こそが、目の前の子どもを救うことに繋がることにのでは ないかと気づくことができました。

子どもの貧困問題においては誰もが「当事者」に

最後に、参加者の方々から『初めて自分の境遇を話すことができた。』、『自分が支援のボランティアをする原点を見つめなおすことができた。』、『自分の抱えている"辛い"という感情と、支えてくれる人の存在に気付くことができた。』というコメントをたくさん頂きました。

こうした当事者・支援者を問わず接し、だんだんと仲良くなることで、「その人の抱える困難の力になりたい」と思うことのできるプログラムや、自らの 話を聞いてくれる人に話すことによって自らを整理することのできる、無条件に認めてもらうことのできるプログラムが、社会にもう少し必要なのではないかと も思いました。

今回、あくまで支援の方法論などについては触れず、個人の”想い”を尊重したことによって高い満足度を得ることができたと感じていますが、同時にそ れは普段そうした気持ちを共有するような時間を過ごすことが難しいからこそのものであると感じています。実際に支援に携わるうえでは方法論の方が大切であ り、目の前の子どもたちに大きく影響するものとなります。しかし、今回はそれらを少しだけ置き去り、一人ひとりの想いや原点を共有することを大切にした結 果、こうした評価を得ることとなったため、そうした「人」を癒すような空間の重要性にも気づかされました。

また、先ほどまで当事者・支援者と記しましたが、子どもの貧困問題においては誰もが「当事者」であるように筆者は思います。子どもの貧困問題に、そ の渦中に流されていってしまうことで「当事者」となった人々も、子どもたちを助けたいとの思いから支援をすることでこの問題の「当事者」となっていった 人々も、日常を過ごしていく中である時に立ち止まり、自身の想いを見つめ直したり、共有したり、共有を通して周囲の人から反応をもらうことで、さらなる一 歩を踏み出せる原動力となるのではないでしょうか?

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