ひみつ基地

2015年09月号 vol.31

子どもの仲間同士や親子の対立をちからに変える-お互いの考えを尊重し、意見が違うことを楽しむために

2019年09月13日 13:48 by Ryoji_Fujikashi

8月下旬、出張帰りの飛行機の中でこの記事を書いています。今回の滞在中、カリフォルニアの広い青空の下、樹齢100年のピーカンの木が風に揺られる音を聞きながら、そこで40年以上暮らしている日本人女性の方と対話をする機会がありました。「アメリカ人はSelf−importantで、それが和を尊ぶ日本人との一番の違いだと思います」とのこと。自己中心的な意識が強いということは(自分のことを大切にしているという捉え方もできるが・・・)、他者との意見の違いに対して自己主張できる強さなのかもしれません。日本の農耕民族の歴史・文化では、相手の気持ちを察して、その上で自分の気持ちを表現することが大切だったようです。作り笑顔で相手に合わせることもコミュニティーの中で生きていくためには必要な能力だったのではないでしょうか。

筆者は、幼児教育に関わりながら、小中学生、高校生、大学生とアドベンチャー教育プログラムを通して、人間関係や自己の内面について学ぶ活動をしています。そんな日々の中で、人と対立をすることに苦手意識を持っている子どもが多いように感じていますが、みなさんの周りはいかがですか?だれかが言ったアイディアに、すぐに「いいね!」とだれの反対意見も出ないままに進むグループワーク。きっと他に意見があるはずなのに、一人一人が自分の意見を大切にできていないと感じることがあります。対立を恐れず、否定的ではなく前向きに捉えるためには何が必要なのか、改めて考えてみたいと思います。

対立を恐れる子どもたち

私自身子どものころは「八方美人」で、嫌なことがあっても笑って誤魔化すタイプの子どもだった記憶があります。対立を恐れている子どもはどんな心理状態なのでしょうか。


・自分の意見に自信がない
・集団の中で目立ちたくない
・他者の評価が気になる
・嫌われたくない


など、色々な理由がありそうです。『友だち幻想―人と人の"つながり”を考える (ちくまプリマー新書)』では、「同調圧力」という言葉で説明されていましたが、子どもたちの中に「みんな同じ」でいなければいけないという暗黙の規範が存在することがあります。いつも友だちと一緒に行動しなければいけない雰囲気があり、だれかと違う行動をとると「いつもと違う」と非難されたり、一人正当な言動を取ると「かっこつけやがって!」と後ろ指を指されたり。そのような関係性があると、自立した行動が取りづらくなります。行動を決めるのが他者との関係性であり、「自ら動く」のではなく「流される」場合、そこに責任感は生まれず、考え判断する力は育ちません。

安心して意見が言える環境

建設的な対立が起こるためには、何によりもまずは自分が安心して自己表現できる場があることが大切です。これまで寄稿させていただいた、「居心地の良い集団づくりのために今一度考えるべきこと」、「居心地の良い集団づくりのために②」でも書いたように、まずその集団に安心を感じ、一歩踏み出してチャレンジしやすい環境を整えることが、教師や大人にできる支援だと思います。一人ひとりが「自分を大切にしてよいのだ」と思える空間、自己主張してもよいと思える集団規範があることは、対立を起こすための勇気になります。

相手との違いを受け入れやすくするために

自分を大切にすることと同様に、相手のことを大切にすることも忘れてはいけません。コピーライターのひすいこたろうさんの著書『3秒でハッピーになる 名言セラピー』の中に、「間抜けで生きよう!」というコラムがあります。けんかの原因は「あの人は間違っている」という考え方。ここから「間」を抜くと、「あの人は(わたしと)違っている」となります。つまり、”Wrong”ではなく”Different”。自分と相手とのやり方や考え方が異なるときに、たとえ「自分は正しい」と思っていても、相手を変えようと努力するのではなく、まずは「ああ、この人は違う考えなんだ」と受け入れること。「対立」という言葉を冷静に受け止めると、二つの反対の立場にあるものが並び立っていること」(引用:大辞林)とあり、必ずしも対決・衝突、または敵対という意味ではありません。相手の行動・考えを尊重する感覚は、自分を大切にすることと同様に身に付けたい感覚です。

対立は勝ち負けで解決するという思い込みを外す

私のAという意見と、相手のBという意見があるときに、必ずしも「A or B」の意見で勝ち負けを決めなければいけない場面は少ないのではないでしょうか。意見を交わす中で、Cというアイディアが生まれてもいいし、「もっとよい案は?」と問いかけDというアイディアに発展してもよい。先にAのアイディアを試して、その後でBのアイディアを試してみるのもよい。幼稚園教育要領の「人間関係」の中には「互いに思いを主張し、折り合いを付ける体験をし、きまりの必要性などに気付き、自分の気持ちを調整する力が育つようにすること」とありますが、まさにこの折り合いをつける体験が原点です。

親・教師が率先して、「対立をちから」に変えるお手本を見せられるか?

先日受講した親業協会の上級講座で、親と子の対立の解消について改めて学びました。権力を持った親と、持たない子の間では、Win-loseの解決法をとることが多くなりがちです。親が一方的に対立を解消させようと、命令したり、叱ったりすることは、子どもの自立と考える力の育ちを阻害します。親が率先して、自分も相手も大切にし、お互いが大切にされていると感じられる対立解消の方法を実践していくことは、やがて子どもが平和的に対立を解決する方法を学ぶことにつながります。大人が想像もしないような解決策を、子どもから出してくるならば、それを素直に受け入れ、楽しめる大人でありたいものです。そのためには、まず子どもの話を丁寧に聴くことが入り口。相手の言い分を聞き、こちらの思いを丁寧に伝える。その上で、お互いが納得する解を見つける。このような手順を踏む対立の解消方法、実践できていますか?

こうやって改めて考えてみると、対立をすることを肯定的に捉えて前に進んでいくためには、まずはだれかに話を聴いてもらうことが、大人にも子どもにも必要なのだと思います。家族、友人、同僚、だれかに自分の声を聴いてもらえることで生まれる力を信じて、お互いに聴き合える文化を育んでいきたいものです。

矢切幼稚園主事/ファシリテーター 藤樫亮二

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