Eduwell Journal

2015年12月号 vol.34

希望の就職をするために大学生活でやっておくべき一つのこと-大学生が誤解している企業の求める能力とは?

2020年05月23日 22:54 by shoko_hatano

来期の新卒の就職活動の時期が右往左往しているニュースが報じられ、スケジュールに学生側も企業側も少なからず混乱していると思います。そのような様子を見て、就職活動に対して不安を感じている大学の下級生や高校生も多いのではないでしょうか?

今後、採用スケジュールがどのようになっていくかはわかりませんが、企業が学生に求めている能力は大きく変わることはありません。では、企業側はどのような能力が必要だと考えているのでしょうか?また、その力を身につけていくために、どのような大学生活を送る必要があるのでしょうか?

採用コンサルタントとして、大手企業を中心に金融からメーカーまで、幅広い企業の採用プロモーションや採用業務の効率化、選考プロセスの設計に携わった経験や、高等教育機関(大学・短大・専門学校)と高等学校の接続問題に取り組んでいる経験をもとにお伝えしたいと思います。

学生は、自分に足りない力を誤解している

平成21年に経産省が行った調査(経済産業省/平成21年度就職支援体制調査事業:大学生の「社会人観」の把握と「社会人基礎力」の認知度向上実証に関する調査)で、興味深いものがあります。企業は「学生に不足している」と思う能力要素を、学生は「自らに不足している」と思う能力要素を選び、それを比較したものです。企業側は学生に対し、「主体性」「粘り強さ」「コミュニケーション力」といった内面的な基本能力の不足を感じている、という結果が出ました。それに対して学生は、技術・スキル系の能力要素が自らに不足していると考えており、認識に大きな開きがあったのです。

同じ調査の中で、もう一つ取り上げてみます。以下は、企業は「学生が身に付けている」と思う能力要素を、学生は「自らがすでに身に付けている」と思う能力要素を選んだものです。学生側は「チームワーク力」「粘り強さ」といった能力要素に関して、既に身に付けていると考えていますが、企業は身に付けていると思っていません。つまり、学生はすでに身についていると思っている力が、実際には企業が求める水準に達していないのです。



就活に有利か不利か、ということに意味はない

世の中にはたくさんの「これは有利」、「これは不利」という情報が飛び交っています。学歴はこれくらいじゃないと落とされる、インターンシップに参加すると内定がもらいやすい、この資格が、この学部は・・・など挙げ始めるとキリがありません。もちろん、これらが全てアテにならないとは言いません。しかし、それ以前に実力が伴わなければ、どのような有利な条件であっても不合格でしょうし、実力があれば多少不利な条件であっても合格するでしょう。

2020年の東京オリンピックが決まったとき、「今からでも出場を目指せるマイナー競技は何か?」というのがネット上で話題になりました。具体的には馬術やクレー射撃などは競技人口が少なくて狙い目と言われているようですが、それであってもオリンピックに出るには相当な練習をして実力をつけなければならないでしょう。

オリンピックと比べるなんて、と思われるかもしれませんが、クレー射撃の競技人口は1万人ほど(しかも休眠中の会員も含む)だそうです。人気の企業の場合には数万人の応募の中から、十名程しか採用しないこともありますので、倍率から見ても決して遠い例ではありません。何においても、「有利な条件」を積み上げたからといって、実力が伴わなければ意味がないというのは、当たり前のことです。

実力は「本気」になることで伸びる

大学生活において(大学生活だけでなく、それ以前にも言えることですが)すべきことは、何が有利、何が不利という情報に惑わされることなく、「実力」をつけることです。「実力」とは、学力や教養、社会人基礎力や体力など、あらゆる力が考えられます。社会人になって必要となる力は業界や会社によっても異なりますし、自分自身の向き不向きがあるので、どの力を身に付けるのかは人それぞれですが、前述のように「一定の水準」が求められることは確かです。

では、どのようにして「実力」をつければいいのか。様々な方と意見交換して出てくるのは「とにかく何かに一生懸命になること」です。自分が夢中になれるもの、時間を忘れて没頭できるもの、そういったものに取り組み、試行錯誤を重ねることで、成長することができるのです。

心理学者M.チクセントミハイ博士が提唱する「フロー理論」の中で、人はフロー(没頭している)状態では、自分の能力を最大限に発揮し、難しい課題を困難と感じず、何をすべきかが明確に分かり、より複雑な技能や能力を持った人間に成長することができる、と言われています。この力を身に付けたいからこれに取り組む、ではなく、自分が夢中になれるこのことに取り組んだから、必要によってこの力とこの力が身に付く、という順番なのです。

  

人は「想い」の中で磨かれる

夢中になれることに取り組む、もう一つの良い点は、そこに自分の意志や想いがあることです。最近、聞いたある高校の事例なのですが、その高校はバンカラな校風で学園祭などは生徒が一から自分たちで企画し、盛り上げていたそうです。しかし、大きな制度改革が行われた結果、生徒たちはすごく頭が良くてコミュニケーション力なども高いけれど、どんな学園祭を作りたい、という想いはないから「先生、何をしたらいいですか?」と聞いてくるようになった、というお話でした。社会に出たときを考えると、とても怖いことです。

課題を与えられたら、それを完璧にこなすことができる、それも悪いことではないかもしれません。しかし、仕事は人と一緒にするものであり、人の困っていることや必要としていることに応えて対価をもらうものです。人の「想い」を汲み取ることや、自分の「想い」に共感してもらうことが重要です。その「感性」もまた、社会に出るために磨いてもらえればと思います。

Author:羽多野祥子
教育・研修プランナー。1987年、熊本県八代市に生まれる。東京の大学に進学し、卒業後は企業の新卒採用を支援する会社で営業職に就く。その後、研修企画会社を経て教育関係のNPO法人で新規事業の立ち上げやマネジメントを経験し、2018年10月に宮崎県日南市へ移住。現在は「地方と都市部の教育格差を解消する」をミッションに掲げ、フリーランスとして中高生のキャリア教育や企業の社員研修などに取り組む。

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